進藤環 Tamaki Shindo 「絶え間なく沿う」「方々へ連れていかれる前に」


進藤環 Tamaki Shindo 「絶え間なく沿う」 created in 2011, bought from Gallery art unlimited in Aug 2014






写真家の進藤環さんの作品です。


ご自身で撮影された植物や風景の写真を手作業でコラージュ(フォトモンタージュ)した作品です。

私が購入した作品は、主に植物をモチーフとした作品なのですが、植物の生命力、毒々しいまでの鮮やかな色彩、むせ返るような湿気、逆に荒涼とした季節も感じる作品です。

実際の生態系や空間から隔絶されて、個々の植物や風景が溶け合わずに独自に主張しており、画面から高いエネルギーを感じます。

人間社会で例えると、単民族国家の日本ではなく、多民族国家でも南米のような人種のるつぼでもなく、人種が溶け合わないで個々に主張するサラダボウル的な米国の様なイメージなのかなと思います。

同質性や統一感が無い分、個々の輪郭が際立ち、主張し、画面のエネルギーが高く鮮やかです。

植物においても、人間においても、異質なものが隣にある場合に拒絶や摩擦のエネルギーが高まるんでしょうか。

コラージュの個々の断片では視点や陰影がバラバラになっているので、作品全体で一つの風景を表現させる微妙な感覚の調整が制作に必要なんだろうなと思います。

抽象絵画が完全に捨て去る遠近感やモチーフの形態や大小の関係はある程度残しつつ、異空間を作られているのは、絵画のシュルレアリズムに少し通じる部分があるのかなと思います。

作品を購入して数年経た後に、作家さんの講演を聞く機会があったのですが、大学では油画を専攻されていて、具体的な外の世界のイメージを自分の中で再構築し、筆を重ねていく方法で絵画を制作されていたようです。

修了制作で優秀賞を受賞されたようですが、ただ、その時に絵画作品を完成させる事の難しさを感じられていたようです。

その後、写真の表現方法が自分に合っていると感じられたそうで、写真の学校に入り直し、室内での撮影から始まり、次は外に出て、撮るべき対象を見つけるために、普段は近づかない人に話しかけたり、野山を放浪したり、女性一人では危ない撮影旅行をされていたそうです。

自分の撮った野山の写真を手作業で再構築し、コラージュする制作方法は、写真家とペインターの両方の技術を使用されていると思うのですが、画面全体のどこで緊張感を持たせて、どこで抜くかといったような絵画的な構成を的確にされているんだと思います。

表現に対する勉強と追及を時間をかけてされて、現在の制作方法にたどりつかれたんだなと感じました。

進藤環 Tamaki Shindo 「方々へ連れていかれる前に」 created in 2012, bought from hpgrp Gallery Tokyo in Dec 2012





別の作品も購入しており、こちらはあまりコラージュを使わないで(一部では使われていると思いますが)制作された作品です。


私は実家が田舎で、家のすぐ裏から山に入れるので、子供の時に山に分け入った時の、草を踏んで先に進む感覚や、湿気、同じような景色が進んでも進んでもずっと繰り返される感覚を思い出します。


後日、作家さんの講演を聞く中で、道なき道を分け入って、遭難しかかったり、変な人に声をかけられることもあったとお聞きし、大丈夫かなぁと心配になった記憶があります。


最近では、その土地の歴史的な構築物を画面に加えたり、岡山県の北木島にある丁場湖という石切場の跡地を撮影し、島の住民のストレートフォトを撮ったり、色々な形で制作を続けられているようです。


2015年から、九州産業大学の芸術学部の講師をされているそうですが、私の大学のゼミの同期が同じ大学の経営学部で教えているので、面白い偶然を感じています。

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