池田衆 Shu Ikeda 「Pomegranates #1」


池田衆 Shu Ikeda 「Pomegranates #1」 created in 2019, bought from Maki fine arts in Jun 2019






写真家の池田衆さんの作品で、写真を切り抜いて制作されています。

http://shuikeda.com/

構図が伝統的な静物画なので、ペインティングにも見えますが、写真を切り抜いた作品です。

また、切り抜いた跡が筆跡にも似ているので、余計に写真と絵画のイメージが混同する面白い作品です。

題名のPomegranatesといのは、ザクロ(柘榴)という事で、西洋絵画では「多産、繁栄、死と復活」のシンボルとして描かれるようです。

西洋絵画の静物画としての見方と、写真の歴史を合わせて考えると、この作品の面白さが増すと思います。

写真の黎明期に、特に肖像画や写実の分野だと思いますが、絵画と写真の上下論争があったと聞いています。1900年頃にアート写真としての地位を目指したフォトセセッションの運動もあったようです。

写真技術の誕生で、写真と絵画の関係性が議論されたようです。

一概には言えないですが、その後、絵画は抽象的な精神活動や筆跡等の表面の物質性を表現する個人的な方向で強さを発揮し、写真が報道やスナップ等の現実的、大衆的な方向で、皆で共有する方向に強さを発揮した気がします。

そういった過去からの絵画と写真の乖離的な流れを思って、逆に2つを混合、融合させるこの作品を見ると、何だか奥深いなと。

最近の写真は表面ではなく、物質性を意識させる作品も多いですよね。

この作品を購入する前にも、池田さんの作品は10年ほど前に初めて拝見し、その時は花や植物の写真を切り抜いて作品を制作されていたのを覚えています。

綺麗でかつ、画面の中で、像が存在するところと切り抜かれた空白の強い対比で独特の緊張感が産まれていた作品だったと記憶してきます。

個人的な趣味で恐縮なのですが、あまりにビッチリ書き込んだ作品は圧迫感があると言いますか、少し余白がある方が、そこに鑑賞者の想像力が働く気がして心地いいです。

意図的に切り抜くことで頭の中で記憶の欠損を埋めるような作用も働いているのかもしれません。

これまでの池田さんの作品は遠景の構図の写真を切り抜いた作品が多かった気がしますが、今回は絵画的なテーマで近景の作品を制作されており、今後の展開も気になります。

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