渡部剛 Go Watabe 「PUNCH-LINE Mozaic02」
渡部剛 Go Watabe 「PUNCH-LINE Mozaic02」 created in 2010, bought from Young artist Japan in Nov 2010
女性ファッション誌の切り抜きをコラージュして、ハニカム構造の金属を上に被せた作品です。
http://watabego.com/
https://note.com/watabego
Young artist Japanというタグボート主催のアートフェアで購入したのですが、アートフェアでは数多くの作品を一度に見るのですが、この作品は表層的なユニークさもありますが、それ以外にも何か引っかかるものがありました。
購入した時に作家さんと話す機会があったのですが、確か、作家の渡部さんは神保町の古本屋で働いていて、その環境の中で作品を作られたと仰っていたいたように記憶しています。
女性誌の文字の切り抜きを作品に使用されているのですが、色が派手で、レタリングが独特で、文章のテンションが高いです。「すぐ買わなきゃ!」「愛され顔、選べます」「リゾートガールスタイル」「最強Tシャツ」「最強マスカラ」。
たまに映画館とかで、良く分からない会話で大爆笑している女の子達を見かけますが、箸が転んでも可笑しい年頃というか、ドーパミン高めの、あんな感じのテンションなのかなと。躍動感や疾走感がありますね。
何が「最強」なんだと突っ込みたくもなりますが、こういった若い人の需要を喚起する流行と消費の文化をシニカルに見ている訳ではなく、平和ボケかもしれませんが、政治・社会のシリアスな新聞記事の切り抜きよりは親近感が湧いてきます。
人間の情動を表現しようとするペインティングは多いですが、この作品はコラージュの形態で若い人の情動や時代の雰囲気を直接的に表現することに成功していると思います。
現代アートの文脈で考えると、リヒテンシュタインのポップアートのようなシミュレーショニズムは漫画の「イメージ」や「像」をアート作品の中に配置していますが、渡部さんの作品ではコンビニの雑誌コーナーにあるような大衆的な女性誌の「メッセージ」の切り抜きを作品中で使用しており、ポップアート流れの中でこの作品の位置を考えるのも面白いです。
また、仮にですが、女性誌の切り抜きの作品があったとして、それがモデルの女の子の写真を切り抜いてコラージュしたとしたら、どうでしょうか。
人物や容姿を表現する作品になってしまうと、人間自体が生もので時間に捕らわれる側面があり、髪型·化粧·ファッションのあまりにも早い流行の変化で、作品を制作した直後から現在の感性とはかけ離れてしまう気がします。
人物写真をコラージュするには権利の問題もあると思いますが、そのようなノスタルジックな像ではなく、ある程度時間を超えられる標準的な文字を利用することで、作品に対してどのような効果が発揮されているのかを考えるのも面白いです。
ハニカム構造の金属は、レタリングが見えにくくなる反面、良く見たい意欲を刺激されるのと同時に、像の反射はメッセージを受け取る人間のメタファーのようで、立体的な作品の見せ方にも工夫しているなと感じ、少しジョゼフコーネルの作品が思い出されました。
パッと見は突飛な見た目の作品に見えるのですが、現代アートの文脈を汲みつつ、さらに独自性も出し、見せ方も相当工夫されている奥が深い作品に感じます。
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