上野龍 Ryu Ueno 「テイ・ホウ」


上野龍 Ryu Ueno 展覧会 「テイ・ホウ」のうちの作品の一つ created in 2009, bought from Roonee 247 Photography in Nov 2009



3点目に購入した作品です。

オリンパス6という1950年前後に発売された蛇腹カメラで、多重露光の方法で撮られています。正方形のフィルムは珍しいですね。

上下の2枚の写真ですが、下は普通の田舎道の電柱の写真で、上の写真は下と同じ像の写真を別の場所で感光させて、違う像(牧場と柵の様なもの)が写り込み、一部が消えています。

多重露光の作品は他にも良く見るのですが、この作品の像の混ざり方は特に私好みでした。

展覧会の題名であるテイ・ホウという言葉は、新聞に掲載されている報道写真からタイトルや文章を切り取った後の状態を示しているそうです。

タイトルや文章無しに、報道写真だけ提示されたら見る人はどのような反応をするのでしょうか? 何を表現したいのか分からず、ポカンと宙に浮いたようになり、全く違う捉え方をされることもあるのかもしれません。

また、テーマやコンセプトが重要視される現代アートの中で、敢えてそれを捨て去ろうとするテーマの作品と捉えるのも面白いかもしれません。

全く別の観点ですが、私は、この作品を見ると、頭の中の記憶が消されていく過程の印象を受けて、少し気持ち良さを感じます。

昔見た風景の記憶が消えて行く姿はどんなでしょうか?

音はしなさそうですね。どんなスピードで、どの部分から消えていくのでしょうか。
この作品のように他の風景と混ざりあって消えていくのでしょうか。

意識できないから忘れて行くのであって、きっと、誰にも分からないですよね。
でも、確かに頭の中では像が消えていくのだと思います。

そんな、誰にも認識できない記憶の風景が消える様子を、この作品を見てイメージしてしまいます。

作家の上野龍さんは、1963年愛知県生まれ。元は即興演奏をやっていた方だそうです。

ギャラリーのルーニーさんは、新宿の四谷三丁目から馬喰町に移転されて、現在も営業されています。
https://www.roonee.jp/

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